NanoDrop 紫外分光光度法
ランベルト・ベールの法則 (dsDNA, RNA, オリゴ)
A260/A280 & A260/A230 純度QC

核酸濃度計算機|A260・純度比

A260、吸光度の換算光路長、希釈倍率から核酸濃度を推定し、A260/A280・A260/A230比を計算します。参考スペクトルの模式図で混入物の影響を説明します。

核酸濃度・吸光度比計算

A260から濃度を推定し、A260/A280・A260/A230比を確認します。

NanoDropの核酸測定表示値が10 mm換算済みなら、実際の測定光路が短くても10 mmを選んでください。短光路は、その光路長で報告された未換算値にのみ使います。3つの吸光度は同じ換算基準で入力してください。

ブランク補正済みの吸光度を入力してください。A280とA230は省略できます。比率の計算にはA260と分母の両方が正である必要があります。

希釈前の推定濃度

42.5 ng/µL

0.043 µg/µL = 0.043 mg/mL

推定総収量

2.13 µg

希釈前の試料全量を使います。体積は正の値が必要です。

A260 / A280

1.85

比較範囲内

代表値約1.8、比較範囲1.7〜2。

A260 / A230

2.07

比較範囲内

一般的な参考範囲:約2.0〜2.2。

濃度 = A260 ×(10 / 光路長mm)× 50 × 希釈倍率。総量(µg)= 濃度(ng/µL)× 希釈前の全量(µL)/ 1000。

比較範囲はスクリーニングの目安です。混入物、pH、ブランク不一致、測定ノイズで値は変化し、範囲内でも純度や完全性は保証されません。特に低吸光度では装置の測定範囲を確認してください。

吸光度と濃度の関係

核酸の濃度測定はランベルト・ベールの法則に基づきます:

A = ε · b · c  ⟹  c = A / (ε · b)

Aは260 nmの吸光度、bは光路長(cm)、εは吸光係数です。cの単位はεと対応させ、モル吸光係数ならmol/Lを使います。以下は10 mm(1 cm)換算での質量濃度の経験的な概算係数です:

  • 二本鎖 DNA (dsDNA): 1.0 A260 = 50 µg/mL (50 ng/µL)
  • 一本鎖 RNA (ssRNA): 1.0 A260 = 40 µg/mL (40 ng/µL)
  • 一本鎖 DNA(一般的な概算): 1.0 A260 ≈ 33 µg/mL (33 ng/µL)

50と40も一般的な経験係数です。短いオリゴ、修飾核酸、特定配列の正確な定量には固有の吸光係数を使います。A260には他の吸光物質も寄与するため、結果は紫外吸光法による推定値です。

A260/A280・A260/A230比の見方

以下は近似的な参考値で、混入物の同定基準ではありません。計算機はdsDNAのA260/A280を1.7〜2.0、RNAを1.9〜2.2、A260/A230を2.0〜2.2と比較します。範囲内でも純度や完全性を保証しません。

試料A260/A280A260/A230解釈上の注意
dsDNA≈ 1.8≈ 2.0–2.2緩衝液、pH、濃度に依存
RNA≈ 2.0≈ 2.0–2.2比率からRNAの完全性は分かりません
ssDNA・オリゴ配列や測定条件に依存一律の合否判定は行いません。定量には配列固有の吸光係数を推奨

紫外吸収スペクトルの模式図:DNAと混入物

DNA紫外吸収曲線の模式図DNAの基準曲線は230 nm付近に谷、260 nm付近にピークを持ちます。230 nmの吸収を加えると短波長側が、タンパク質の吸収を加えると280 nm付近が高くなります。実測値や入力値から推定した曲線ではなく、教育用の模式図です。相対吸光度0.00.51.01.5220230260280320波長(nm)DNAの基準曲線DNA+230 nm吸光物質DNA+タンパク質

実測データではなく教育用の模式図です。DNA基準曲線のA260を1とし、同じDNA背景に吸光物質の寄与を加えています。混入物はA260にも影響しうるため、3本を別々に正規化していません。

グアニジン残留で230 nm付近の吸収は高くなりえますが、特異的な特徴ではありません。フェノールは260〜280 nm領域にも影響します。原因の判断には実測スキャン、ブランク、他の測定結果を併せて確認してください。

図と異常な比率の読み方

上図の曲線はDNA吸収と混入物による影響の模式例で、計算機の入力値から描いたものではありません。実測スペクトルの代用にはならず、A230、A260、A280の3つの値から全スペクトルやピーク位置を求めることもできません。

低いA260/A280はタンパク質、フェノール、pH、ブランク不一致などで生じます。低いA260/A230は抽出試薬の残留やブランク不一致でも生じます。高すぎる比率も、特に分母がゼロに近い場合は再測定してください。まずブランク、測定範囲、再現性を確認し、抽出キットの手順に沿って調べます。

参考資料:Thermo Scientific NanoDrop Nucleic Acid Technical Guide · NanoDrop 2000 FAQ

計算例

計算実例:ミニプレッププラスミドDNA収量と純度検定

未希釈のプラスミド溶液(希釈倍率1)をNanoDrop核酸モードで測定。10 mm換算表示値はA260 = 1.62、A280 = 0.88、A230 = 0.77、希釈前の試料全量は50 µLです。

  • 1. 10 mm換算 A260 = 1.62 (装置の表示値)
  • 2. プラスミド濃度 = 1.62 × 50 ng/µL = 81.0 ng/µL
  • 3. 総収量 = 81.0 ng/µL × 50 µL = 4,050 ng = 4.05 µg
  • 4. A260/A280 = 1.62 / 0.88 = 1.84 (dsDNAの一般的な参考範囲内)
  • 5. A260/A230 = 1.62 / 0.77 = 2.10 (一般的な参考範囲内)

A260 = 1.62が未換算の1 mm生データなら、濃度は810 ng/µL、総量は40.5 µgになります。核酸モードの10 mm換算済み表示値を再度10倍にしないでください。

よくある質問

A260から濃度への換算係数はどう使いますか?

10 mm換算光路長で、A260当たりの一般的な質量濃度係数はdsDNAが約50、RNAが40、ssDNAが33 ng/µLです。いずれも経験的な概算値で、塩基組成、構造、修飾に依存します。オリゴの正確な定量には配列固有の吸光係数を使ってください。

低いA260/A230から混入物を特定できますか?

できません。グアニジンやフェノールなどの残留試薬のほか、ブランク不一致や測定ノイズも比率を変化させます。A230がゼロに近い場合には非常に高い比率も生じます。実測スペクトル、ブランク、装置の測定範囲を確認してください。

pHやブランクはA260/A280に影響しますか?

pHやイオン強度は吸光度比に影響します。試料の緩衝液に合うブランクを使い、装置と抽出法の手順に従ってください。DNA約1.8、RNA約2.0は近似的な参考値で、pHによらない純度の証明ではありません。

3つの吸光度からスペクトルを再構成したりDNAとRNAを区別できますか?

できません。参考曲線はスペクトルの特徴を説明する模式例で、入力値から再構成したものではありません。3つの吸光度からピーク位置や全スペクトルは求められません。通常のA260定量にはDNA、RNA、他の紫外吸光物質も寄与します。必要に応じて実測波長スキャンや検証済みのDNA・RNA特異的測定法を使ってください。